Pythonの前に、私たちが学ぶべきこと。
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iLectが今あえて基礎的な講座を作った理由。

こんにちは。人材育成 iLect で教材開発をしているコンテンツチームです。
昨今のAIブームは本当に凄まじく、世の中の関心は「生成AIをどう日々の業務に使うか」「いかに手軽にツールを導入するか」という点に主軸が置かれています。開発の現場においても同様で、AIに指示を出すだけで、驚くほど短時間でコードが形になるようになりました。このように、AIを前提とした開発が当たり前になりつつある一方で、現場では「AIの提案でコードは動いたけれど、『なぜこの実装にしたのか?』と問われると答えられない」「エラーが発生した際、AIが提示した複数の修正案のうち、どれが本当に正しいのか自分で判断できない」という方も増えてきました。AIが瞬時に答えを提示してくれる時代だからこそ、私たちに本当に求められているのは、単にコードや文章を生成する力ではありません。AIの出力を「読み、疑い、確かめ、説明し、そして責任を持つ力」、すなわち本質的な思考力に他ならないのです。
私たち iLect は、単に「AIを便利に使っていく人」ではなく、「AIを作り、さらに進化させる人」を育成するスタンスを貫いてきました。これは、iLect の運営をしているNABLAS株式会社の Vision である「よき先人となる」にも紐づいてきます。そんな私たちが本年度、新たに追加したのが以下の3つの講座です。
確率統計基礎講座
データ分析基礎講座 - seabornで体験するデータビジュアライゼーション
生成AIリテラシー講座
一見すると非常に地味で基礎的なラインナップに見えるかもしれません。「AI最先端の会社なのだから、もっと尖った、高度なテーマをやればいいのに」「Dify、Claude Code、Codexといった最新技術の講座を作ればいいのに」と思われる方もいるでしょう。
しかし、私たちはここで基礎に立ち返る、地に足のついた教材を開発し、提供することに決めました。そこには、AIを使っていく人はもちろん、プログラミングやデータサイエンス、AIを学び始める多くの方に、どうしても伝えたい本質があるからです。
Pythonが書ければ、AIで課題解決ができるわけではない
「AIやデータサイエンスを学ぼう」と決意したとき、多くの方が手に取るのはAIに関する技術本やPythonの入門書などのプログラミングの要素を含む教材です。確かにPythonを学び、コードが書けるようになれば、プログラミングスキルそのものは向上します。しかし、それだけで自社やクライアントの本質的な課題を解決できるでしょうか?
私たちは、データサイエンスや機械学習、深層学習の本質は、プログラミングそのものではなく「現状をどう見て、何が課題であるかを理解し、どう判断し、どの手法でおとしこみ、課題解決するか」という思考のプロセスにあると考えています。
「データはあるけれど、どう扱っていいかわからない」 「Pythonでグラフは描けたけれど、ここから何が言えるのか説明できない」「生成AIに相談しても、それが正しいかどうかわからない」といった壁にぶつかるのは、プログラミングスキルの不足ではなく、「データをどう見るか」「データが出した数字にどう根拠を持つか」というプログラミング以前の、統計やデータの読み方が壁になっている場合があります。
受講者の声から気づいたPythonの壁の前にあった知識不足
実は、私たちがこの基礎的な講座を今になって開発した背景には、講座後に行う受講生アンケートから得た声にあります。
iLectでは、データサイエンティストを目指してPythonの基礎から教師あり・教師なし学習までを網羅的に教える DS4Me という講座を提供しています。受講生の方々は日々の業務の合間に宿題となる課題や予習復習など熱心に取り組んでくださる一方で、講座後のアンケート結果には「難しかった」にチェックを入れている受講生が多くいらっしゃいました。私たちはアンケート結果を元に、教材のどこが、何が、どのように難しく感じたのかを、講座の録画と教材を行き来して調査します。これまでの受講生はPythonやC言語などのプログラミング経験のない方が多くいたため、プログラミングの箇所で躓いている可能性が高いと考えていました。しかし、本当にそこで躓いているかはわかりません。そこで、2024年から受講者アンケートの内容や質問の文章を変え、根本的に何が不足しているのかをアンケートを通して直接受講生からの声を取得しはじめました。すると、以下のような切実な意見がありました。
統計に関する前提知識が乏しいため、なかなか理解が進まなかった
専門用語が多く、難しかった
統計学の基本的な所の知見がなかったために、いまいち事象や数式が理解できなかった
統計については難しかった
私たちが考えていた、プログラミングの箇所よりもずっと前の壁にぶつかっていることがわかりました。むしろ、丁寧に優しく小さなステップを踏んで習得していくプログラミングの部分は好評で、そこで躓いている受講生は少なかったのです。
とはいえ、プログラミングの学習と、不慣れな統計・データサイエンスの概念理解を同時に進めるのは、想像以上に脳への負荷が高くなります。ならば、数字を見て判断する力を養い、データの見方と扱い方、人に説明する時の見せ方と伝え方までを、プログラミングを学ぶ前に知っておく。そうすることで、スムーズにデータサイエンスや機械学習、大規模言語モデルなど、AIに関する講座へと繋げられると思い、基礎的な講座を作ろうと決意しました。
データの数字にどう根拠を持つか「確率統計基礎講座」
受講生アンケートの課題意識から生まれたのが「確率統計基礎講座」です。この講座は、数式やプログラミングに依存することなく、感覚ではなく確かな根拠をもってデータを読み解く力を養います。データのばらつきや不確実性を正しく捉え、精度の高い業務判断を行うための思考を身につける講座です。

平均値や中央値をみて結論を出すのではなく、ばらつきや外れ値にも目を向けることで、データの背後にある実態を立体的に捉えられるようになります。「データから何が言えるのか?」「どこまで言えるのか?」「次にどうアクションすべきか?」を難しい数式の暗記に頼らず、自分の言葉で論理的に説明し、感覚ではなく確かな根拠をもって意思決定につなげるための最初のステップです。
学生時代に確率や統計を学んで来なかった方を対象とし、数式を見ると目を瞑りたくなる人にも受けていただきやすいよう、学習ハードルを徹底的に下げました。「数式は最小限にし、数式が必要な箇所では具体的な数値を代入したものも記載してね」「文字よりも、図をたくさん使って、受講生がわかったと思えるような教材にしてね」と何度も何度も伝え続け、誰でも確率統計の最低限の知識と、業務上の判断で必ず助けになる知識を身につけられる教材になりました。
データをどう見て、どう見せるか「データ分析基礎講座」
データの背後にある数字への理解の最初のステップである確率統計学の基礎を深めたら、次はいよいよデータサイエンティストへの道を開くDS4Me講座が用意されています。しかし、マーケティングやプロジェクトマネジメントなどのビジネスサイドの方にとって、エンジニア向けの講座はハードルが高く感じるかもしれません。それならば、スモールステップとして、まずはご自身の業務ですぐに活用できるよう、確率統計基礎で学んだ根拠に基づくデータを自ら可視化し、さらに探索していくアプローチを学ぶのはいかがでしょうか。

「データ分析基礎講座 - seabornで体験するデータビジュアライゼーション」では、seabornという可視化ライブラリを用いて探索的データ分析(EDA)の基本を学びます。
この講座では、seabornを用いるため、Pythonによるコーディングが必要となりますが、主要なコードは教材にあり、「このコードを実行すると、このようなグラフが描ける」「ここを変更すると、色や幅が変わる」程度のプログラミングしか学びません。グラフを描くためのコードを覚えることよりも、
なぜこの図を描くのか
どのような数学的意味があるか
どのような場面で使うか
どのように説明するのか
といった問いをこの講座では軸に据えています。売上やアンケート、広告などの業務データから、相関、分布、クラスバランス、平均比較といったEDAの観点を自分でチェックし、実務を想定したワークフローを理解・実行できるスキルを習得します。確率統計学で養った数字の意味する事象が、ここで視覚的イメージとして結びつけば幸いです。
対話型AIが日常に溶け込む時代、企業はどう導入していくか
確率統計で数字の捉え方を養い、データ分析でデータの可視化と探索を身につける。これらは「AIを作り、さらに進化させる人」になるためのステップです。
一方で、昨今のAIブームがもたらしたもう一つの大きな変化についても、私たちは目を向ける必要があります。それは、生成AIの日常化です。生活の中で対話型AIが日々の会話相手となり、「愚痴を聞いてもらう」「人間に話しにくいことを伝え、発散する」「調べ物をする」ことも増え、広告や商品紹介では生成AIを用いて作成された画像や動画を見ない日は無くなり、AIはすでに私たちの生活の一部に自然と溶け込んでいます。
しかし、個人が日常でAIを使いこなすことと、企業が組織として生成AIを導入し、活用していくことは、全く異なる難しさを持っています。多くの企業が生成AIの導入と聞くと、単に「ChatGPTやCopilotなどのライセンスを全社に配布すればいい」「他社がDifyや新しいLLMツールで業務改善に成功したから、うちも同じツールを入れよう」と考えがちです。ですが、他社の成功事例やパッケージをそのまま横展開して再現しようとしても、実務にうまく噛み合わずに形骸化してしまうケースが後をたちません。さらに、RAGやAIエージェントといった業務におけるAI導入に活躍できそうな技術を知ろうとして、既存のサービスに手を出してみたものの、基礎知識不足により頓挫してしまうケースも見受けられます。私たちiLect が日々の企業研修や導入支援を通じて、多くの組織の実態に向き合う中でも、まさにこうした課題に直面するケースが顕著に見受けられます。
私たちは、企業が生成AIを適切に活用し、生産性を向上させるには、「他社事例の模倣ではなく、企業の特性に最適化した形で、運用を自分たちの頭で考え、設計・導入することにある」と考えました。企業に最適化された安全な運用を、自分たちでゼロから設計するためには、何が求められるのでしょうか。
企業の安全な導入のための「生成AIリテラシー講座」
個人が日常でAIを使いこなすのとは異なり、企業が組織として安全に導入し活用するためには、プログラミングスキルではなく、技術の仕組みとリスクを正しく理解することが大切です。上層部がリスクを恐れるあまり一律利用禁止にすれば、隠れて無断利用するシャドーAI(Shadow AI)と呼ばれる問題を誘発する可能性が高まります。知識不足のまま丸投げすれば、不備だらけの成果物を人間が確認せずにそのまま通してしまうワークスロップ(Workslop)と呼ばれる問題が発生し、信用失墜を招きかねません。

「生成AIリテラシー講座」では難しい技術的な専門用語を最小限にし、LLMの仕組みから、RAG、AIエージェント、バイブコーディングといった技術背景を整理します。その上で、AIによる嘘であるハルシネーションへの対策、情報漏洩を防ぐために必要なもの、著作権や炎上リスクと対策を、具体的な事例とともに体系的に学びます。最終ゴールは、自社にとって最適な「安全な運用ガイドライン・ルール」を自分たちで考え、策定できるようになることです。技術の限界とリスクを正しく見極めるリテラシーという土台があってこそ、社員は安心してAIを使いこなし、生産性の向上に一歩踏み出すことができるのではないでしょうか。
地に足のついた基礎こそが、次のステップを本物にする
一見すると地味で遠回りに見える講座ですが、データサイエンス、機械学習、深層学習、あるいは最先端の生成AIを自社に導入する前に、これらの基礎的な土台を作り込むことが、流行り廃りの激しいAIという技術において大切であると考えて作り上げました。
AI技術に関する進化はすさまじく、日々新しいサービスも提供され、身近なものとなっています。しかし、全ての技術において、基礎が抜けていては応用はかないません。
基礎から応用まで、「AIを作り、さらに進化させる人」を育成するスタンスを貫きつつも、技術を知る私たちだからこそ伝えられる、「AIを便利に使っていく」ために知っておくべき知識の醸成にも貢献できる講座提供を行ってまいります。
人材育成 iLect のコンテンツチームではこれからも、奇をてらわず、地に足のついた学びをお届けできるよう、受講生の目線に立って、本当に価値のある講座を作り続けてまいります。教材に込めたこのシンプルな想いが、皆様のこれからの挑戦を支え、未来のビジネスを切り拓く確かな礎となることを願っています。
iLectでは、Pythonを学ぶ前に必要な基礎講座から、E資格取得、LLM、RAG、Transformerまで、技術者と技術者を目指す方のために、あらゆる難易度の講座を提供しております。また、技術職でない方のために、AIリテラシーやプロジェクトマネジメント、対話型AIの使い方といった講座もございます。形式もオンラインでリアルタイムにご受講いただくものから、e-leaning形式まで、柔軟に対応させていただいております。どの講座を受講すればよいかわからない場合は、ヒアリングを通してスキル目標の設定や不足している人材の洗い出しなどを行い、最適なセミナーをご提案させていただきます。もちろん、既存講座のカスタマイズも可能です。人材育成にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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